これからの生き方 5

日本の社会では政治や経済の枠組み(パラダイム)をこのままにして、会社至上主義を続けても、一部の運のいい人以外には、これ以上人間らしい生活の向上はできそうもないのである。

倉本聰が、北海道の富良野に居を移し、「北の国から」メッセージを送り出したとき、人々は、忘れていたもの、失ったものの大きさに驚いた。

ムツゴロウこと、畑正憲が「動物王国」をつくったときも奇矯な人が奇妙なことを考えた、というのが一般的な反応であった。

しかし、彼らは世の中の生き方のパラダイムを自分の力で改編した時代の先覚者といえるかもしれない。

今、内需拡大の錦の御旗と労働時間の短縮などで日本にも本格的な余暇時代がくると、別荘地の中には、地価の高騰を早読みする業者や人々が並び、前夜から申し込みの行列ができる個所や即日完売になる物件までが現れている、という。

何しろ、都心の土地とリゾート地では、地価がゼロニつ違うのだから、ローンに縁が切れたり、家産が増えた人にとっては優良地のリゾートは魅力ある投資の対象となってきたのかもしれない。

しかも、ウイークデーは都心のマンションから仕事に出かけ、週末に山や湖のセカンドハウスで生活する、というライフスタイルが日本でも広がる、とこのほど、経済企画庁が発表した。


都会にいると、便利なのはいいですが、やはりゆとりがないですからね。

これからの生き方 4

「何か、森の人は顔が違うわね。

生き生きしてるというか……」と女房が口を開いた。

「そうだろ」男が相槌を打つ。

「山の人はね、顔が違うだろ。

いい顔つきしてる。

あんな顔は会社じゃ夏休み明けに少し見るだけだ」。

毎年の夏、職場の同僚を見て気づくのは、休みを取る前と休みを取った後では、同一人物の顔つきが驚くほど違うことだ。

わずか数日の休日なのに、顔にパッと、生気が戻る。

実は、男はそんな顔をこの地でたくさん、見つけたのだ。

「お前、定年後七年という話、知ってるだろ」と、男は妻に聞いた。

もちろん、妻は知っている。

「考えてみると、これは平均でね。

へたしたら、俺ももう一〇年もたんよ」。

女房は男の口調に驚き、男の疲れた顔と山の男たちの顔を一瞬比べた。

日本経済は、大量の貿易黒字を抱え、日本は世界で最も金持ち国となった、という。

しかしそれはあくまで計算上の所得であり、稼いだ給料の多くは土地や住宅のローンに吸い上げられて実際の生活水準に結び付いていない。

サラリーマンは名目的に数字を挙げられても、もう豊かにも、幸せにもならないことを知ってしまった。


外国の人からは、「日本人は休暇を取らない」とよくよく言われますね。

面白い恥ずかしい話

「はずかしい体験」諦の中で、私がすごく気に入っているのは、私の行くヒーリング 東京で女子学生からきいたものだ。

彼女ジャニスは、けわしく切り立った峡谷の小径をハイキングしているとき、頭上の岩に生えている野草の花に気づいた。

彼女は、自然界の奇蹟をほめたたえるべきだと感じて、ごつごつの岩をよじのぼった。

ようやく花の近くにきて、香りを嗅こうと身をかがめたとき、花びらがぱらりと全部落ちてしまった。

ロマンティックに浸ろうとして、あえなく裏切られた彼女は、けたけたと峡谷中に響く声で笑った。

自然が、チャップリン顔負けのジョークをしかけてきたのだ。

ニューヨークに住んでいる友人の俳優の話だが、彼は、工事中のリンカーン・センターの中庭で、お弁当を食べていた。

すると、剥がされた敷石の問を縫うようにして、ひとりの男がやってきた。

男はけつまずき、あやうく転びかけた。

しゃんと体をたてなおすと、だれか見ていなかったかとあたりを見まわした。

そしてわが友人と目が合うと、彼は両手をあげ、肩をすくめて笑い出した。

なんとそれは、バレエ・ダンサーのルドルフ・ヌレエフだった。

これからの生き方 3

男と道で出会う山小屋の住人たちと話が弾む。

「知ってますか。

ゴジュウカラを。

シジュウカラじゃないですよ。

ゴジュウカラはね、木を逆さに下りるんですよ。

頭を地面に向けて、逆さになって木をつたって下りるんですよ。

初めて見たときは、思わず目をこうやってこすりましたよ」「星を見ながら眠るんですよ。

この辺は星が多くてね、一晩に三つも流れ星を見たことがあってね。

最高ですよ。

すぐ眠れますよ。

最近は冬でも、窓開けて星を見たいときがあってね。

女房にしかられてますよ」。

男と同年齢ぐらいの男たちが興奮している。

建築現場に同行した妻が、山の男たちの無邪気で饒舌なのにたまげている。

男の会社には「定年後七年」という言葉があった。

五七歳の定年なのだが、多くの先輩は会社を辞あると、平均わずか七年の寿命しかない、という。

厳しい身体検査をし、健康診断を定期的に行いながら、なお日本人の平均寿命に遠く及ばない。

、男が入社した当時の上司も六〇の坂を過ぎると、次々と倒れた。

そのたびに、男は落ち込んだ。

とりわけ、同じくらいの年齢の同僚の死は男を無口にした。


やはり、バリバリに働いていた人というのは、定年後がこわいですね。

これからの生き方 2

冬場は地面は地下一メートルも凍る高原である。

「そんな寒いところ、行けないじゃないですか。

一年の半分も使えない」。

こう言う女房のところには実家からも「破産して、住んでる家まで売ることにならないでしょうね」と探りが入る。

女房は落ち着かない。

男は今はやりのマスコミで働いている。

入社以来、不規則勤務が続き、有給勤労休暇など、ないも同然である。

最近少しは休みが増えたとはいえ、まだ、夏休みだって四、五日が関の山である。

同僚たちと毎日、遅くまで働き、つきあう。

そんな生活がもう二〇年以上も続いている。

酒と疲れがにじんだ顔の男が、妻や親戚の不安気な視線を無視して、山小屋をほんとうにつくり始めた。

また、男の同僚が死んだ。

男が家で、また、無口になった。

妻はいつものことと思っていたら、葬儀の翌日、男は休暇を取って、妻を山小屋の建築現場に誘った。

五月の半ば、八ヶ岳の南麓はまだ、新緑に早い。

しかし、富士、アルプス、八ヶ岳連峰に囲まれた高原の森の中には、さまざまな暮らしがあった。

東京の近郊の家を売り、この山荘地帯を永住住宅にした人、東京まで二時間余りの通勤をしている人、都内にマンションを持ち、家族だけ山に住んでいる人、病後の療養生活を静かな山で送っている人、ここには、都内の団地や社宅で見るのと異なる、さまざまなライフスタイルがある。

ある程度年を取ったら田舎や山の中で暮らしたい人って増えていますね。

これからの生き方 1

これからの生き方について考えさせられました。

男が初あて新車を買ったのは四五歳のときだった。

「こんどは新車を買おうか」と男が妻に言ったとき、結婚して二〇年近い女房はとまどい、子供たちは喝采した。

なぜなら男は常々、同じ徒%機能を持つのに、ただ新しいだけで中古の三、四倍もの金をかけて新車を持つなど正気の沙汰ではない、と言っていたからだ。

新車が家に届き、初めて運転したとき、男は感嘆した。

これまで使っていた車は一〇年物。

この一〇年間の、日本の自動車産業の進歩を知識としては知っていても、自分では楽しんでいなかったから無理もない。

つつましく、将来や不時に備えて一歩一歩歩む律儀なタイプの男である。

が、それから二年、大して金藩まったと思えないのに・男は今度は山梨県・八ヶ岳に山荘をつくると言って、家族から親戚までを唖然とさせた。

女房は真剣に家計の心配をしている。

いや、女房が本当に心配しているのは家計より、男の中でこのところ何か異変が起きていないか、である。

男が八ヶ岳の南麓につくっている山荘は、わずか二部屋の文字どおり小さな山小屋である。

標高一四〇〇メートル、夏は爽やかだが、冬は零下二〇度近くになる。

日本は自然に恵まれているか 8

都市や産業立地の問題だけではありません。


長い時間をかけて私たちの祖先が試行錯誤の結果として残してきた、急斜面や川ぞいの湿った場所などの弱い自然たち。


これが今や、新しい地域開発やニュータウン造りにおいては全く考慮されることなく、残されている開発用地として扱われ、どんどんつぶされてきています。


たしかに航空写真などで見てみると比較的人家の少ない地域であるにせよ、そこは実は長い時間をかけてみると、しばしば何らかの影響で自然のゆりもどしのある、人間の干渉に敏感な弱い自然のところが多いのです。


ところが今日では、ブルドーザーやさらにさまざまな新しい機械を使えば、一時的には山をけずり、谷を埋め、海を陸地化することが可能です。


自然の多様な環境、それは逆にいえば人間にとっては使いにくいところでしたが、今日では簡単に利用可能な状態にすることが出来ます。


また、一時的・局地的には新しい化学毒物を使ってすべての生物を皆殺しすることも出来ます。


しかし、それは多様な自然環境をあまりにも限度をこえて逆立ちさせたような状態をつくり出すものです。


したがって、ほんのわずかな自然の揺りもどしで、さまざまな深刻な影響をもたらすことになるでしょう。

日本は自然に恵まれているか 7

昔は自分さえ毒を食べなければ大丈夫であったでしょう。


しかし今は違います。


自分の生活域のどこかに、分解性の困難で残留性の高い新しい化学物質などの毒物が捨てられるとします。


すると、食うものと食われるものとの食物連鎖を通して、生物濃縮をしながら人間や猫やコウノトリなどの高等動物の皮下脂肪や肝臓にそれらの毒物が濃縮される危険性があります。


このような生態学の基本的な知見が欠けていた当時の行政・企業・法曹界。


さらに労組や一般市民にとっては、目に見えるもの、手に触れることのできるもの、測定出来るものだけがいわゆる科学的判断の手がかりとされてきたのでした。


そして不幸なことに、公害という形でその後の日本人の生き方に大きな警鐘をならす結果となったのでした。

インテリジェント・シティ

従来の都市づくりは、道路、下水道、公園といった、いわば「骨格・筋肉系」の都市基盤施設(インフラストラクチュア)の整備が中心であったが、今後は、これに「頭脳・神経系」のものを付加して、創造的都市空間を創出しよう、というのがインテリジェント・シティの背景にある考え方である。

施設や地域の1部または全体を高度情報化に対応したOA機器やニューメディア等の設備で装備することをインテリジェント化というが、インテリジェント・ビル群からなる未来型の情報都市を目指すインテリジェント・シティ整備の核心部分となるのは、シティ・オートメーションである。

すなわち、高度情報通信基盤施設・システムの整備による都市機能の高度化または効率化の推進である。

道路交通情報提供システム、防災情報システム、下水道管理システム等の整備がこれに該当する。

建設省では、昭和六一年度より「インテリジェント・シティ整備推進事業」を全国五三の指定都市においてすすめている。石塚孝一氏によると、そこでは、共同溝等を利用した伝送路の整備、都市再開発・ニュータウン形成等と併せた地区の中核的施設となる高度情報センターの整備、高度情報通信システムを利用した都市施設管理システムの整備などを促進することとしている。


日本は自然に恵まれているか 6

昔は炭坑夫が坑道に入るときに、しばしば鳥かごを持って入っていたといいます。


音も臭いもなにもしなくても、今まで鳥かごで羽ばたいていた小鳥が急に元気がなくなり、止り木からパタンと落ちた時には、同じ命をもった人間に対しても当然影響があるのではないかと、あわてて彼らは外へ避難していたといいます。


現代の一面的な科学技術があまりにも偏重された結果の公害の問題は、実は人の命に対しての、あるいは生態系のシステムに対しての理解が無視され、忘れられていたところに生じています。


例えば不幸な水俣病の例を見ても、猫が狂い死にしようと、多数の人の命がうばわれようと、


「因果関係がはっきりしない以上、また不十分なPPMの測定器の針が動かない限りは、人間の命には影響がない、ここにはそのような危険分子は含まれていない」


・・・という考え方がそこにみてとれるのではないでしょうか。


だからこそ、あの不幸な水俣病が行政にとりあげられるまでに実に十余年もの時間がかかっているのです。


日本の小学校・中学校あるいは高校・大学で、理科や生物の時間に


「人間は生態系のもっとも弱い消費者の立場で生かされている。


しかも生産、消費、分解・還元の3つの太い柱から成り立った多様なシステムの中で、消費者だけを考えた時であっても、食物連鎖、えさを通しての1つのくさりでつながっているということ、栄養価の高い大きな魚や肉を食べる人間や高等動物は、実はこの食物連鎖のピラミッドの頂点に置かれている」


・・・ということが十分教えられる必要がありました。


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