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2010年11月 アーカイブ

これからの生き方 1

これからの生き方について考えさせられました。

男が初あて新車を買ったのは四五歳のときだった。

「こんどは新車を買おうか」と男が妻に言ったとき、結婚して二〇年近い女房はとまどい、子供たちは喝采した。

なぜなら男は常々、同じ徒%機能を持つのに、ただ新しいだけで中古の三、四倍もの金をかけて新車を持つなど正気の沙汰ではない、と言っていたからだ。

新車が家に届き、初めて運転したとき、男は感嘆した。

これまで使っていた車は一〇年物。

この一〇年間の、日本の自動車産業の進歩を知識としては知っていても、自分では楽しんでいなかったから無理もない。

つつましく、将来や不時に備えて一歩一歩歩む律儀なタイプの男である。

が、それから二年、大して金藩まったと思えないのに・男は今度は山梨県・八ヶ岳に山荘をつくると言って、家族から親戚までを唖然とさせた。

女房は真剣に家計の心配をしている。

いや、女房が本当に心配しているのは家計より、男の中でこのところ何か異変が起きていないか、である。

男が八ヶ岳の南麓につくっている山荘は、わずか二部屋の文字どおり小さな山小屋である。

標高一四〇〇メートル、夏は爽やかだが、冬は零下二〇度近くになる。

これからの生き方 2

冬場は地面は地下一メートルも凍る高原である。

「そんな寒いところ、行けないじゃないですか。

一年の半分も使えない」。

こう言う女房のところには実家からも「破産して、住んでる家まで売ることにならないでしょうね」と探りが入る。

女房は落ち着かない。

男は今はやりのマスコミで働いている。

入社以来、不規則勤務が続き、有給勤労休暇など、ないも同然である。

最近少しは休みが増えたとはいえ、まだ、夏休みだって四、五日が関の山である。

同僚たちと毎日、遅くまで働き、つきあう。

そんな生活がもう二〇年以上も続いている。

酒と疲れがにじんだ顔の男が、妻や親戚の不安気な視線を無視して、山小屋をほんとうにつくり始めた。

また、男の同僚が死んだ。

男が家で、また、無口になった。

妻はいつものことと思っていたら、葬儀の翌日、男は休暇を取って、妻を山小屋の建築現場に誘った。

五月の半ば、八ヶ岳の南麓はまだ、新緑に早い。

しかし、富士、アルプス、八ヶ岳連峰に囲まれた高原の森の中には、さまざまな暮らしがあった。

東京の近郊の家を売り、この山荘地帯を永住住宅にした人、東京まで二時間余りの通勤をしている人、都内にマンションを持ち、家族だけ山に住んでいる人、病後の療養生活を静かな山で送っている人、ここには、都内の団地や社宅で見るのと異なる、さまざまなライフスタイルがある。

ある程度年を取ったら田舎や山の中で暮らしたい人って増えていますね。

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